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【英語】Grammar in Use を使った中学生・高校生への英文法指導の利点3つと注意点4つ

こんにちは、広島市の四技能型・英検対策の英語塾、スクール今西の今西一太と申します。

実は今(2021年1月19日)、英語学院の文法学習で使用している Basic Grammar in Use および Grammar in Use Intermediate というテキストについて、

Grammar in Use を用いた日本の中学生・高校生への文法指導

という論文を書いています。

そこで改めて Basic Grammar in Use(以下 BGU)とGrammar in Use Intermediate(以下GUI)の各ユニットなどについて色々分析してみたのですが、改めていいテキストだなぁと思いつつ、日本の学生に使用する際の注意点がかなり整理されてきましたので、ここで一般の方に分かりやすくまとめてみようと思います。

1. BGUとGUIのよいところ

良いところはたくさんあるのですが、以下3つにまとめたいと思います。

[1] 例文の質が良い

まずは、例文や問題が実際のコミュニケーションで使われるような状況に即して作られていることです。対話文の例が多く、実際にその文法を使用する際の活用法がリアルに分かります。

また、ネイティブスピーカーが作った例文ですので、当然ながら不自然な例文はありません。

不自然な例文がないのは当然、とお思いかもしれませんが、日本のテキストを見ると、文法項目を意識させるために作ったあまり自然ではない例文がたまに目につきます。例えば、以下はいずれも日本の教科書から取った例文です。

I have studied English for two years.

→ 普通は I have been studying English for two years. という。have been studying という現在完了進行形をまだ習っていない生徒のために、現在完了形で無理矢理作った少し不自然な例文。

He has not more than 1,000 yen.

→ 「この文は英語として間違っている」と母語話者からコメント有。not more than と no more than の違いを明示するために日本人が無理矢理作った例文であると思われる。

以上のように、日本の教科書には指導の都合から作られた不自然な例文や、文脈から独立した人工的な文が散見されます。BGUやGUIにはそれがありません。

[2] 状況から英作文する課題が多い

BGUとGUIには、絵を見て状況を説明する、状況を与えられてふさわしい文章を作文する、など、実際にその文法を活用する練習課題が非常に多く含まれています。文法の知識を得るためでなく、実際に会話や作文で使用するための基本として文法を学習するという目的がしっかりしています。

[3] 実際の場面で活用できる文法項目の説明が入っている

日本のテキストでほとんど、もしくはまったくと言っていいほど説明の無い項目のうち、実際会話や作文でよく使う項目について、きちんと説明があります。例えば

・have got「持っている」の用法の詳細
・be always doing と always do の違い
・could と was able to の違い
・wish 過去形 と wish would の意味の違い

など、日本の教科書を結構詳しく勉強した私でも「なるほど~」と思わせるような項目がいくつか入っています。could / was able to の違いなど、非常によく使う項目であるにもかかわらず日本の教科書では説明が不足しているように感じます。
 

2. BGUとGUIを使う際に注意すべき点

さて、それではBGUとGUIは理想の教科書かというと、もちろんそんなことはありません。日本人向けに作られた教科書ではありませんので、日本人が使う際に様々な問題が生じます。ここではその問題を取り上げ、対処法の例を述べます。

[1] 初級者にとっては難易度が高い

上にも述べたように、BGUとGUIには「状況から判断して適切な英文を書く」という課題が多く含まれます。これはまだ学習を初めて間もない生徒にとっては非常に難易度が高い問題方式です。

よって、中学校に入っていきなり使い始めるのではなく、中学校1年生程度の文法項目は大体マスターできた辺りで、復習も兼ねて最初(be動詞の現在形)から勉強し直すのがよいと思います。

また、解説や問題の指示文も含めてすべて英語で書いてあるので、初級者はまずそこが理解できないというジレンマに陥ります。これを防ぐため、スクール今西ではBGUとGUI全ユニットに関して日本語での補助テキスト(解説・和訳付)を独自で作成し、生徒に使用してもらっています。(以下は実際のGUI補助テキスト)

[2] 配列に注意が必要

BGUとGUIの大きな特徴として、お勧めの習得順ではなく、品詞ごとに文法項目が並んでいることが挙げられます。つまり、まずは動詞の用法、次に名詞の用法、その次に形容詞の用法、という感じです。

それによって生じる問題として、難易度の高い項目が突然現れたり、難易度の低い項目がかなり後になって出てきたり、ということがあります。例えば以下のような例です。

・現在形が終わった後に突然現れるhave got
・未来形や助動詞の前に出て来る現在完了と受動態
・受動態の基本の直後にいきなり完了受け身、進行受け身
・これら全てが終わった後に代名詞の基本中の基本 I my me ...

これに関しては、先生が学校のカリキュラムや生徒の習得レベルを検討しながら適切なユニットを選びつつ進めていくしかないように思います。この理由により、中学生が全て自学自習でBGUを基本からやるのはちょっと厳しいかも、と感じます。

[3] 日本人にとって便利な項目のいくつかが無い

先にも述べたように、BGUとGUIは日本人向けに作られたテキストではありません。そのため、日本人が英語を理解するときに非常に便利な概念、項目のいくつかが不足しています。例えば、

・五文型(SVOC)の概念が全く登場しない
・品詞の区別に関する説明が一部しかない
・不定詞の三用法の概念が登場しない

このあたりに関しては、なくても英語の習得は可能ではありますが、あった方が理解しやすいと思われますので、適宜日本のテキストの一部を使用して補うことが多いです。

[4] 受験英語には一部対応できない

コミュニケーションで使われる表現の説明が豊富なのに比べて、比較の no more than など、受験英語で非常に好まれる難易度の高い文章表現についての説明が不足しています。受験英語に対応しようと思ったらそれ向けのテキストでかなり補ってやる必要があります。
 

3. まとめ

以上、BGUとGUIのいいところと注意点を述べてきました。注意点は初級者の独学にとっては結構致命的ですが、その欠点を補って余りある利点が多くあるため、スクール今西ではできる限りの工夫をして活用しています。(紙幅の都合でその他の工夫は省略しました)

中学生の時点から実用的な英語力を身に着けてもらうため、さらに工夫を重ねてよりよい指導ができるように頑張っていこうと思います。

 

 

at 2021/01/22 10:16:19