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【英語】「前置詞をイメージで覚える」のは本当にいいことなのか

こんにちは、広島市の四技能型・英検対策の英語塾、スクール今西の今西一太と申します。

先日、同じ大学院の研究室出身の後輩、慶応義塾大学講師の平沢慎也先生と英語教育について有意義な議論ができましたので、平沢先生の許可を得て、ここで共有したいと思います。

1.「前置詞をイメージで覚える」はいいことか

最初は以下の平沢先生が出していた actually の用例、「Xだ。あ、いや、やっぱり(actually)Yだ。」について私が質問したことから始まりました。

Chase: Would you care to join me in some coffee?
Columbo: Uh, no, thank you.
Chase: Dessert, perhaps?
Columbo: No, I’m fine. Well, actually, could I have a cup of tea with honey?
(Columbo, Episode 63)
チェイス: 一緒にコーヒーでもどうですか。
コロンボ: あ,いえ大丈夫です,ありがとうございます。
チェイス: それじゃデザートなんかはいかがですか。
コロンボ: いいえ,お構いなく。あ,やっぱり,紅茶いただけますか?蜂蜜つきで。

平沢先生はこの例を用いて、

actually の意味を「実は」だと考えるのではダメで、母語話者の中には本来何十という actually のパターンが存在しており、それを実際の用例の中で学んでいく必要がある

という旨の主張をしていました。

そこで気になって、

前置詞をイメージで覚える、という方法論が取られることがよくあるが、これについてはどう思うか

と聞いてみました。

「前置詞をイメージで覚える」という方法論は非常に人気があり、よく行われる指導法です。以下、いくつか参考サイトを上げておきます。

「前置詞をイメージで覚える」というアプローチはまさに「actuallyを『実は』で覚える」に近いアプローチで、覚えやすい最重要の「本質」だけを覚える、というアプローチです。

これについての意見は、予想通り、

初級者にとっつきやすくするという意味では良いが、上級者が正確な理解を求めるなら害のほうが大きい

といったものでした。

(ちなみにここまでの平沢先生のご意見、私はすべて賛成です)

 

2.「本質を覚えればよい」というアプローチではダメ

なぜ上級者が前置詞をイメージで覚えることに害が大きいのか、詳細を述べるのは紙幅の関係で困難ですが、例えば平沢先生が『英語教育』の2021年7月号で「byは『までに』か?」というコラムをお書きになっています。そこでは、

byは状態を表す動詞と一緒に用いて「~の時点で〇〇の状態が成り立っている」という意味になることが多く、「~までに〇〇する」のような動作を表す表現で使われることはかなり少ない

という、

「~までに」の訳語からは絶対に予測できない by の用法

について分析をしています。

つまり、「by は『~までに』で覚えろ!」というアプローチでは自然な英語を身に着けることができないということです。

ましてや「by は『~の近く』のイメージで覚える」というやり方で、この「状態動詞と一緒に用いて~」などの用法が正しく身に付くはずがありません。

最初の最初、初心者の時点ではイメージをとらえることも重要かもしれませんが、少なくともレベルが上がるにつれて、実際の文脈の中でどう使われているかを見て、そのパターンを知識として蓄積していくことの方がはるかに重要性が高いです。

第二言語習得理論では口を酸っぱくして「大量のインプットが重要」と言いますが、その理由はまさにここにあります。

(注:記事の中で平沢先生は「~までに」の代わりに、様々な動詞や福祉との組み合わせで by がどのような意味になるかを述べており、これを覚えれば自然さの精度は上がるかもしれませんが、これほど複雑なことを暗記するぐらいなら実際の用例を習得した方がはるかに楽だし、これに当てはまらない例も必ずあるので利益が大きいと思います。)

 

3.まとめ:バランスが大事

以上で述べたように、「前置詞をイメージで覚える」などのタイプの指導法はとても分かりやすく受けが良いのですが、このやり方ではどこかで間違いなく壁にぶち当たってしまい、不自然な表現を連発してなぜ不自然なのかがわからない、という学習者を作り出してしまう可能性が非常に高いです。

かといって、「とにかく用例に触れまくってすべて丸暗記しろ」という指導法もそれはそれで単なる丸投げですし、生徒に対する負担が非常に大きくなってしまいます。

そこで、その両者のバランスを取ることが重要になってきます。すなわち、

最重要の基本パターンを学びつつ、用例にたくさん触れて自然な用法を身に着ける

というアプローチです。

このことについては平沢先生が

平沢慎也 (2016) 「仕組みを理解することと、丸ごと覚えること ―sit up and take notice から学ぶ―」『東京大学言語学論集』37, 71-90.

という論文で、sit up and take notice という表現を例に述べています。もしご興味がある方がいらっしゃったら、以下のリンクからPDFでダウンロードできますので、ぜひご覧ください。

Hirasawa_2016

とりあえず今すぐに簡単にできることとして、

「辞書を引いたら例文を必ず読む」

ことを提案したいと思います。

いろいろなご意見とブログ掲載許可をくださった平沢先生に感謝申し上げます m(_ _)m

 

at 2021/10/14 10:40:00